日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#062
無量義経の段その二十

大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸轉輪王。(無量義経徳行品第一)

1.みんなちがって、みんないい
(金子みすず)

法華経には実に多彩なる菩薩様たちが登場されます。

説法の場にはじめから居られる菩薩たち。説法の途中途中に、あるいは地の下、あるいは遥か空の彼方より、華麗に登場される菩薩たち。さらには説法の中で語られる、果てしなき過去や未来の菩薩たち・・・。

この内、説法の中で語られる過去未来の菩薩たちを除いて、実際にお釈迦様の法華経説法の場で活躍された主たる菩薩たちを、各章(品と言います)ごとに、ザックリと見てみますと、

無量義経

全三章に渡って、大荘厳(だいしょうごん)菩薩がメイン。

大荘厳(だいしょうごん)菩薩
第一 文殊(もんじゅ)菩薩と弥勒(みろく)菩薩 (第二から第九までは菩薩方はお休みタイム)
第十 薬王(やくおう)菩薩
第十一 大楽説(だいぎょうせつ)菩薩
第十二 智積(ちしゃく)菩薩と文殊菩薩
第十三 薬王菩薩と大楽説菩薩
第十四 文殊菩薩
第十五 上行(じょうぎょう)菩薩・無辺行(むへんぎょう)菩薩・浄行(じょうぎょう)菩薩・安立行(あんりゅうぎょう)菩薩と弥勒菩薩
第十六 弥勒菩薩
第十七 弥勒菩薩
第十八 弥勒菩薩
第十九 常精進(じょうしょうじん)菩薩
第二十 得大勢(とくだいせい)菩薩(勢至(せいし)菩薩)
第二十一 上行菩薩と文殊菩薩
第二十二 上行菩薩
第二十三 宿王華(しゅくおうけ)菩薩と薬王菩薩
第二十四 妙音(みょうおん)菩薩と文殊菩薩、華徳(けとく)菩薩
第二十五 観世音(かんぜおん)菩薩と無尽意(むじんに)菩薩、持地(じじ)菩薩(地蔵(じぞう)菩薩)
第二十六 薬王菩薩と勇施(ゆうぜ)菩薩
第二十七 薬王菩薩と薬上(やくじょう)菩薩、華徳菩薩、妙音菩薩
第二十八 普賢(ふげん)菩薩と弥勒菩薩

観普賢経(かんふげんぎょう)
普賢菩薩と弥勒菩薩

2.オレはチームの主役でなくていい
(魚住純)

文殊菩薩、弥勒菩薩、薬王菩薩

こうして見ていけば一目瞭然。もっとも頻繁に登場される、いわば法華経のレギュラーと言えるのは、文殊菩薩、弥勒菩薩、薬王菩薩のお三方でしょう。

ただし文殊・弥勒両菩薩と、薬王菩薩では、法華経における立場は大きく違います。

文殊菩薩と弥勒菩薩は、法華経における言わば狂言回し。要所要所で大事な質問をしたり、お釈迦様のお話の聞き手を務めたり、更に更にはお釈迦様の瞑想中、代わって二人で問答をしたり等々と、まさに八面六臂の活躍で法華経説法のステージを進行させていきます。

進行役に徹する故でしょう、最多登場でありなが、お二人には、冠(かんむり)番組としての主役の章はありません。

最初から参加しているものの、ずっと一聴衆で通した観世音菩薩には「観世音菩薩普門品第二十五」。

法華経の説法の最後の最後、土壇場で馳せ参じる普賢菩薩には「普賢菩薩勧発品第二十八」と勧普賢経。

同じ菩薩界のビックネームでも、法華経では出番の少ないこっちのお二方の方が、名前を全面に出して主役をはっている(普賢菩薩に至っては、まるまる一巻のお経まで!)のとでは大違いですね。

3.立った場所がその人にとってのセンター
(大島優子)

内 文殊・弥勒の両菩薩が、あくまで狂言回しに徹しておられるのは、そのお立場ゆえでしょうか。

本佛お釈迦様の直弟子たる、上行菩薩等の地涌(じゆ)の菩薩たちは別として、通常の菩薩たちの中で唯一、法華経の説法が始まる前から、既にその法華経の存在を知っているのが、文殊菩薩。

なんと、文殊菩薩は遥か超過去の前世において、妙法蓮華経を聴聞したことを覚えているという、いわば別格的存在なのです。法華経説法の前半で、いつのまにやら霊鷲山を一人離脱し、海底の竜宮城にて(まだ説き終わっていないはずの)法華経を説いたという離れ業を見せるのも、文殊菩薩なればこそですね。

一方の弥勒菩薩は、未来佛となるべき菩薩。五十六億七千萬年後の未来、身の丈千尺(三百三メートル)という大巨人(「進撃の巨人」も真青ですな)として、地上に降臨されるお方です。

お釈迦様の世から正法・像法、そして末法という一サイクルのさらにその先、次なるサイクルにてセンターを務めるわけですから、やはり他の菩薩方とは立場の違うお方と言えるでしょうね。

イラスト 小川けんいち

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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