大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸轉輪王。(無量義経徳行品第一)
法華経には実に多彩なる菩薩様たちが登場されます。
説法の場にはじめから居られる菩薩たち。説法の途中途中に、あるいは地の下、あるいは遥か空の彼方より、華麗に登場される菩薩たち。さらには説法の中で語られる、果てしなき過去や未来の菩薩たち・・・。
この内、説法の中で語られる過去未来の菩薩たちを除いて、実際にお釈迦様の法華経説法の場で活躍された主たる菩薩たちを、各章(品と言います)ごとに、ザックリと見てみますと、
全三章に渡って、大荘厳(だいしょうごん)菩薩がメイン。
第一 | 文殊(もんじゅ)菩薩と弥勒(みろく)菩薩 (第二から第九までは菩薩方はお休みタイム) |
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第十 | 薬王(やくおう)菩薩 |
第十一 | 大楽説(だいぎょうせつ)菩薩 |
第十二 | 智積(ちしゃく)菩薩と文殊菩薩 |
第十三 | 薬王菩薩と大楽説菩薩 |
第十四 | 文殊菩薩 |
第十五 | 上行(じょうぎょう)菩薩・無辺行(むへんぎょう)菩薩・浄行(じょうぎょう)菩薩・安立行(あんりゅうぎょう)菩薩と弥勒菩薩 |
第十六 | 弥勒菩薩 |
第十七 | 弥勒菩薩 |
第十八 | 弥勒菩薩 |
第十九 | 常精進(じょうしょうじん)菩薩 |
第二十 | 得大勢(とくだいせい)菩薩(勢至(せいし)菩薩) |
第二十一 | 上行菩薩と文殊菩薩 |
第二十二 | 上行菩薩 |
第二十三 | 宿王華(しゅくおうけ)菩薩と薬王菩薩 |
第二十四 | 妙音(みょうおん)菩薩と文殊菩薩、華徳(けとく)菩薩 |
第二十五 | 観世音(かんぜおん)菩薩と無尽意(むじんに)菩薩、持地(じじ)菩薩(地蔵(じぞう)菩薩) |
第二十六 | 薬王菩薩と勇施(ゆうぜ)菩薩 |
第二十七 | 薬王菩薩と薬上(やくじょう)菩薩、華徳菩薩、妙音菩薩 |
第二十八 | 普賢(ふげん)菩薩と弥勒菩薩 |
観普賢経(かんふげんぎょう)
普賢菩薩と弥勒菩薩
こうして見ていけば一目瞭然。もっとも頻繁に登場される、いわば法華経のレギュラーと言えるのは、文殊菩薩、弥勒菩薩、薬王菩薩のお三方でしょう。
ただし文殊・弥勒両菩薩と、薬王菩薩では、法華経における立場は大きく違います。
文殊菩薩と弥勒菩薩は、法華経における言わば狂言回し。要所要所で大事な質問をしたり、お釈迦様のお話の聞き手を務めたり、更に更にはお釈迦様の瞑想中、代わって二人で問答をしたり等々と、まさに八面六臂の活躍で法華経説法のステージを進行させていきます。
進行役に徹する故でしょう、最多登場でありなが、お二人には、冠(かんむり)番組としての主役の章はありません。
最初から参加しているものの、ずっと一聴衆で通した観世音菩薩には「観世音菩薩普門品第二十五」。
法華経の説法の最後の最後、土壇場で馳せ参じる普賢菩薩には「普賢菩薩勧発品第二十八」と勧普賢経。
同じ菩薩界のビックネームでも、法華経では出番の少ないこっちのお二方の方が、名前を全面に出して主役をはっている(普賢菩薩に至っては、まるまる一巻のお経まで!)のとでは大違いですね。
内 文殊・弥勒の両菩薩が、あくまで狂言回しに徹しておられるのは、そのお立場ゆえでしょうか。
本佛お釈迦様の直弟子たる、上行菩薩等の地涌(じゆ)の菩薩たちは別として、通常の菩薩たちの中で唯一、法華経の説法が始まる前から、既にその法華経の存在を知っているのが、文殊菩薩。
なんと、文殊菩薩は遥か超過去の前世において、妙法蓮華経を聴聞したことを覚えているという、いわば別格的存在なのです。法華経説法の前半で、いつのまにやら霊鷲山を一人離脱し、海底の竜宮城にて(まだ説き終わっていないはずの)法華経を説いたという離れ業を見せるのも、文殊菩薩なればこそですね。
一方の弥勒菩薩は、未来佛となるべき菩薩。五十六億七千萬年後の未来、身の丈千尺(三百三メートル)という大巨人(「進撃の巨人」も真青ですな)として、地上に降臨されるお方です。
お釈迦様の世から正法・像法、そして末法という一サイクルのさらにその先、次なるサイクルにてセンターを務めるわけですから、やはり他の菩薩方とは立場の違うお方と言えるでしょうね。
イラスト 小川けんいち
元霊断院主任
福岡県妙立寺前住職