日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#063
無量義経の段その二十一

大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸轉輪王。(無量義経徳行品第一)

無量義経の段

1.人の話を聞くことにより、人生の八〇%は成功する
(デール・カーネギー)

前回申しましたように、法華三部経の本編たる『妙法蓮華経』の第二章(ご存知方便品第二ですね)から第九章までは、菩薩様方のお休みタイム。

いずれの菩薩様も、お釈迦様からお言葉をかけられるわけでなく、自ら質問するでもなく、ただただ黙して座しているのみ。法華経を拝聴するに徹されてるんですね。

で、代わって活躍されるのが、いわゆる声聞(しょうもん)と呼ばれる属性の方々。

声聞とは佛様のお声、つまり説法を聴聞する者という意味で、具体的には、お釈迦様と同時代、同じ印度の地に人として生を受け、ご縁あってお釈迦様のお弟子となった方々、お釈迦様の教団の方々を指します。

2.どんなことだって、すべては未来の糧になる
(永田永寿)

『妙法蓮華経』は全八巻からなりますが、この内、第九章までで、なんと四巻の半分が占められてしまいます。

しかも八巻全二十八章中、最もボリュームのある大長編と言えば、第三章(譬喩品第三)と第七章(化城喩品第七)。

かように多くのスペースを割いてまでして、お釈迦様がお説きになったこと・・・。

それこそは、「声聞の方々が成佛する」というお釈迦様よりの予言、つまり印度におけるお釈迦様のお弟子さんたちが、皆はるか未来の世において佛様となることが、師匠たるお釈迦さまによって解き明かされるのです。

これぞ、お釈迦様からお弟子さんたちへの教化の総決算、お釈迦様御在世における教団活動の締め括りが説かれているわけです。

3.かつて誰もが成し得なかった神への道。人類補完計画だよ
(碇ゲンドウ)

第九章まででお釈迦様の時代のことは補完されました。そこで次に問題となるのは、当然ポストお釈迦様。

お釈迦様ご入滅(お亡くなりになること、つまり佛滅です)後に、迷える者たちをいかにして救うか、それこそが、お釈迦さまに残された最後にして最大の懸案事項だったのです。

ゆえに、続く第十章(法師品第十)からは、一転してお釈迦様ご入滅後に、いかに法華経を伝えて弘めて行くかが、説かれることとなります。

「佛、薬王に告げたまわく、又如来の滅度の後に、若し人あって妙法華経の乃至一偈・一句を聞いて一念も随喜せん者には、我亦阿耨多羅三藐三菩提の記を与え授く」

佛様の使いとして、迷える者たちを救い、導くことが菩薩の使命。

我が身亡き後に法華経を伝えんがため、お釈迦さまが最初にお言葉をかけられた菩薩、栄えあるその一番手こそが、文殊菩薩・弥勒菩薩と並ぶ法華経三部経三大レギュラーのお一人、薬王菩薩その人だったのです・・・。

4.俺がやると決めてやる、ただそれだけだ
(伊藤開司)

お釈迦様は薬王菩薩に直接語りかけることで、ポストお釈迦様の時代、すなわち正法・像法・末法の三時に法華経を流布(世に伝え弘めていくこと)すべきことを説いて行かれます。

無量義経の段

そのお釈迦様の強き想いに最初に答えられるのも、やはり薬王菩薩。

共に志を同じくする大楽説菩薩と声を揃えて、薬王菩薩は宣言されます。

「唯願わくは世尊、以て慮いしたもうべからず。我等佛の滅後に於て当に此の経典を奉持し読誦し説きたてまつるべし。後の悪世の衆生は善根転た少くして増上慢多く、利供養を貧り、不善根を増し、解脱を遠離せん。教化すべきこと難しと雖も、我等当に大忍力を起して、此の経を読誦し持説し書写し、種々に供養して身命を惜まざるべし」

この薬王菩薩たちの宣言が刺激となったのでしょう。他の菩薩様たち、さらには声聞の方々さえも、佛滅後の己が処し方を宣言されるわけですが、実はその過程で、ある重大な課題が浮き彫りとなってきます。

そうです、正法・像法・末法三時のうち、最も恐るべき時代、絶望と恐怖の末法万年の時代に、「いったい誰が法華経を流布して行くのか」という問題です・・・。

イラスト 小川けんいち

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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