日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
日蓮大聖人が歩まれた道 日蓮大聖人が歩まれた道

#079

猿島への上陸

されば法華経をたもつ人をば、釈迦多宝十方の諸仏、梵天帝釈日月四天龍神、日本守護の天照太神八幡大菩薩、人の眼をおしむがごとく、諸天の帝釈を敬ふがごとく、母の子を愛するが如く守りおぼしめし給べき事、影の身にしたがふが如くなるべし

行者佛天守護鈔(ぎょうじゃぶってんしゅごしょう)
猿島への上陸

九死に一生を得た一行ではありましたが、いまだ難が去ったわけではありません。荒波に揉まれた船は当初予定していた海路を大幅に外れ、いまやどこに向かっているのかもわからない状況です。現在のように位置を知る便利な機器もない当時のことです、もしも湾を外れ外海に出てしまうようなら、そのまま漂流の末に命も落としかねません。まずは目の前に見えている小島に上陸しようと、船頭は船を漕ぎ進めました。

島に上がった大聖人は小高い場所を見定めると、その場へ赴き天を仰ぎながら再びお題目をお唱えになりました「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無…《。それを静かに見ていた船頭ですが、先ほどの奇跡ともいえる出来事を目の当たりにしたばかり、何やら期待を抱かずにはいられません。

そんな矢先のことです。ふと気がつくと、どこからともなく一匹の白い猿が現れました。当然ながら島に自生する野生の猿でしょう、しかし上思議なことにその猿は人の姿に怯える様子もなく、迷わず大聖人のもとへと近付いていったのです。そして大聖人の袖を取ると、まるでそちらを指し示すかのように、ある方向を見つめています。

猿島への上陸

「ああ陸だ、陸があるぞ《猿の示す方角を見た船頭は、思わずそう叫びました。先ほどまではまったく気付くことのなかった陸地が、今ははっきりとその姿を見せています。「やっぱり上思議な坊さまだ。このお方と一緒なら、なぁんも心配することはねぇ《。喜び勇んで船へと走り、その陸地を目指して再び船を漕ぎ出しました。

目指す場所はもう目の前です、なれた水夫の腕ならばあとは造作もないこと。と、軽い気持ちで小島を離れたのもつかの間、船頭の顔には再び困惑の色が浮かびます。それもそのはず、漕げども漕げども船は一向に前へ進んでくれようとしないのです。大聖人ご一行の行く手を阻む障害は、どうやらまだまだ続くようです。

イラスト 小川けんいち

※この記事は、教誌よろこび平成30年6月号に掲載された記事です。
小泉輝泰

小泉輝泰

宗会議員
霊断院教務部長

千葉県顕本寺住職

バイクをこよなく愛するイケメン先生

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