日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#066
無量義経の段その二十四

大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸轉輪王。(無量義経徳行品第一)

1.大きな夢は人に理解されない
(本田宗一郎)

無量義経の段

結局のところ、法華経がホントに伝えたかったこと、言いたかったことって、ほとんど「知らぬ、通じぬ!」状態だったわけですね(だからこそ、日蓮大聖人が登場される意味があるんです)。

されどいかに真意は伝わらぬとも、それで誰にも興味を持ってくれないマイナーなお経になってしまっては大変です。

大正新脩大蔵経(たいしょうしんしゅうだいぞうきょう)と呼ばれる、大正時代までに日本に伝わった漢訳のお経(震旦(しんたん)で訳されたお経。法華経三部経も漢訳経典です)を総結集した大全集に収録されたお経だけでも、千七十六部にして一万千九百七十巻!更には日本に伝わらなかったもの、そもそも震旦にさえ伝わらなかったお経もあるわけですから、その数はまさに厖大!八千四百も、あながちハッタリとは言えません。

それだけに、そのタイトルさえ滅多に耳にしない、いわば埋もれたお経も半端な数ではありません。たとえ一時は持て囃されても、時と共に忘れ去られて行ったお経も、多々あったことでしょう。

その真意が理解されなかった法華経とて、あるいは時の流れと共に忘れ去られ、埋没してしまうリスクは大きかったのではないでしょうか・・・。

2.能書きはいいんだよ、能書きは
(中尾彬)

されど法華経は決して埋もれず、それどころか逆に佛教史上必ずと言って良いほど「有難いお経」、「大事なお経」として時と場所を超えて信仰され、受け継がれてきました。

この信仰の絶え間ない継続あればこそ、ついに日蓮大聖人の出番へと繋がって行ったのです。

たしかに壽量御本佛の存在も、地涌(じゆ)の菩薩の重要さも、かつてはほとんど注目されませんでした。にも関わらず、法華経の人気が衰えなかった訳・・・。実はそれこそが、法華経の全編にわたって説き示される「ご利益」だったのです。

そう法華経といえば、それこそご利益のオンパレード。

なにしろ法華経を忌み嫌う人の言い分と言えば「法華経には薬の効能は書いてあるが、肝心の丸薬が何であるかが書かれていない」が、古来から定番のフレーズとなるくらい、法華経に説かれていることの大半は、まさにご利益ご利生の嵐だったんですね。

無量義経の段

3.その者蒼き衣を纏いて金色の野に降り立つべし
(大ババ)

祈ることすらしない人、不思議なことを否定すれば賢いと思っている人には、確かに理解しがたい不都合なる事実なんでしょうが、それでも法華経にご利益、ご利生があるのは、まさに厳然たる事実。

その事実を事実と謳(うた)い、人々に実際の利益を授け続けたからこそ、たとえその真意は通じずとも、法華経信仰の火は消えることなく広がり続け、ついに日蓮大聖人の代に行き着いたわけです。

まさにご利益こそは法華経信仰の存続の要(かなめ)!

たとえクライマックスは終わっても、六章にもわたって菩薩たちの競演が続いたのも、念には念を入れて、ご利益を喧伝するためだったのです。

そしてそこでもまた、最多登場で活躍されるお方こそが、あの薬王菩薩(やくおうぼさつ)なのです。

薬王菩薩の何よりの願いは、法華経を未来の世、末法の世へと繋ぐこと、日蓮大聖人の元へと届けることだったんですね。さればこそ、やがて薬王菩薩は自ら人の姿となって、人の世の歴史に降り立つことになるのです。それも二度、かの震旦と、ここ日本の地に・・・。

イラスト 小川けんいち

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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