日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#065
無量義経の段その二十三

大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸轉輪王。(無量義経徳行品第一)

1.終わりよければ全てよし
(シェイクスピア)

無量義経の段

繰り返しますね。

序品第一をプロローグとして始まった妙法蓮華経八巻二十八品(二十八章)は、続く方便品第二から授学無学人記品第九にわたって、まずは印度におけるお釈迦様のお弟子さんたち[声聞(しょうもん)]の最終的な救いが説かれます。

これでお釈迦様ご在世が総決算されます。

よって次の法師品第十からは、お釈迦様ご入滅(お亡くなりになること)後の救い、なかんずく恐怖の末法時代における救いがテーマとなります。

その救いの実行者、お釈迦様の遺志を受け継ぐものとして、ついにお姿を現されるのが、地湧(じゆ)の菩薩のグループなのです。

地湧の菩薩様たちの登場によって、一気にクライマックスを迎えた本編は、如来神力品第二十一において、ご本佛様から地湧の菩薩方へお題目の委託がなされ、そして、嘱累品(ぞくるいほん)第二十二における全聴衆への法華経の委託によって、問題は全て解決とあいなります。

そう、大事なことは二十二章にて解決したわけです。変な話、実際ここで妙法蓮華経というお経はフィナーレを迎えてもよかったはずなのです。

2.まだだ、まだ終わらんよ
(クワトロ・バジーナ大尉)

されど妙法蓮華経は、全二十八章にて成り立つお経。まだまだ残り六章も続きます。

すなわち、薬王菩薩の前世の因縁を明かし、その功徳を説く薬王菩薩本事品第二十三。忽然たるビジター、妙音菩薩の功徳を説く妙音菩薩品第二十四。誰もが知ってる観音様の功徳を説く観世音菩薩普門品第二十五。薬王菩薩、勇施菩薩、毘沙門天王、持国天王、そして鬼子母神・十羅刹女がマントラを説く陀羅尼品第二十六。薬王菩薩、薬上菩薩、妙音菩薩の過去世での活躍を明かす妙荘厳王本事品第二十七。遅れてきたスーパースター、普賢菩薩の功徳を説く普賢菩薩勧発品第二十八。

ざっくり見ただけでもお分かりでしょう、佛教界を代表するスターたちが入れ替わり立ち代わり登場しては、その輝けるステータスが披露されていくわけです。

法華経そのものよりも、まずこの菩薩様や神々の功徳を前面にフューチャーすることで、結果的にそのバックグランドたる法華経の偉大さに結び付ける手法なんですね。第二十五章が観音経として親しまれ、今だ多くの方に信仰されているのも、この全面フューチャーの大成功が行き着いた結果といえます。

無量義経の段

3.試大声は里耳に入らず
(荘子)

なぜ末法の救いの道が補完された後で、スターたちの饗宴が展開されるのでしょうか。それは、一番大事なことは、そうそう簡単には理解されない(あるいは、されてはいけない)ということです。

地湧の菩薩こそは、数多の菩薩様たちの中で、最も偉大なる最高位の菩薩様たち。それは、法華経を読めば一目瞭然です。

されど皆さん、たとえば日本が誇る奈良や京の素晴らしき佛像の展示において、はたして上行菩薩像や浄行菩薩像を拝観された方はおられるでしょうか。シルクロードの番組にて、無辺行菩薩や安立行菩薩の遺品を見た方はおられるでしょうか・・・。

そうです。以前にも申しましたように、佛像(というか、ぶっちゃけ佛教そのもの)の歴史において、地湧の菩薩方は、ずっと忘れられていたも同然の扱いだったのです。

ご本佛お釈迦様に関しても同様です。

如来寿量品にああまであからさまに説かれているのに、「やっぱー、根源の佛様はビル遮那如来ですよね」「いやいや、大日如来こそ、宇宙の根源でしょ」なんて言っている人たちこそ、佛教界の王道だったりするのです。

妙法蓮華経に説かれた大事な教えは、実はずっとず~っと無視同然だったんですね・・・。

イラスト 小川けんいち

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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