日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#058
無量義経の段その十六

大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸轉輪王。(無量義経徳行品第一)

1.神佛習合は何処に行ったのよ

ことほどにかつての皇室には、佛教との強固なる関係が存在していたのです。

神佛習合

しかし、今やその面影すらもありません。神道の長たる皇室の佛教との断絶は、そのまま神仏習合という日本文化の大いなる美点、優れた特色の喪失に繋がっていったのです。まさに失われた百四十五年!

ああ、されどされど、それも致し方なきこと、皇室にて盛んだった佛教、それは賞味期限の切れた時代遅れの佛教、それも明治はおろか、すでに平安の末で任務完了済の佛教だったのですから…。

2.公家佛教と言えば天台宗でしょう

皇室においてセンターポジションにあった佛教といえば、即位灌頂(そくいかんじょう)を誇る比叡山の天台宗でしょう。

天台宗は無論、法華経を根本経典として最重要視する宗派です。

その法華経に説かれている佛様といえば、ご存じ「久遠実成の釈迦牟尼佛」。

ところが比叡山の中心、国宝たる根本中堂(こんぽんちゅうどう)(不滅の法灯が有名ですね)に祀られているご本尊は、東方の鵞王(がおう)・薬師如来(やくしにょらい)なのです。

法華経三部経には、お釈迦様・多宝如来(たほうにょらい)をはじめとして、現在過去未来にわたる数多の佛様たちが登場します。

ビックネームの阿弥陀如来(あみだにょらい)や阿閦如来も、実は法華経に登場する佛様。しかし薬師如来のことは、三部経のどこを開いても見つけることはできません。

そう、登場されていない佛様がご本尊様なのです…。

その逆に、法華経に登場されているのに無視されているパターンが、上行(じょうぎょう)・無辺行(むへんぎょう)・浄行(じょうぎょう)・安立行(あんりゅうぎょう)の四人の大菩薩、いわゆる四大菩薩の扱いです。

伝教大師

法華経には、あの文殊・弥勒・観音・普賢菩薩といった、佛教界のスーパースターともいうべき大菩薩様たちをも遥かに凌駕する究極の菩薩として、この四大菩薩が登場します。

膨大なる数のお経の中で、このベスト・オブ・菩薩ともいうべき四大菩薩のことが説かれているのは、唯一この法華経のみ。

ところが天台宗において、四大菩薩は拝むも何も、その絵像も何もない状態!

まさに四大菩薩への信仰は限りなくゼロに近い状態だったのです…。

3.伝教大師(でんぎょうだいし)は知っていた

法華経こそが拠り所とは言いながら、これではことごとく大事なポイントを外しまくっていると言われても、致し方ないことでしょう。

なにしろ天台宗では、法華経二十八品(二十八章って意味ね)の中で特に大事な要となる品(つまり要品ね)として方便品第二・安楽行品第十四・如来壽量品第十六・観世音菩薩普門品第二十五の四つを挙げるわけですが、このセレクト!第二と第十六は当然として、第十四と第二十五は(むろん大事な教えではありますが)法華経全体の話の流れから言って、これはちょっと違うでしょう!という選び方なんですね。(なんで違うの?ホントはどれ?との疑問には、追い追い後からお話しますね)

ここまでポイントをずらしまくっているその理由、決して法華経を解っていなかったというわけではありません。

後世の方々のことはいざ知らず。叡山の祖伝教大師は、法華経の真意をちゃんと理解しながも、あえて、あ・え・て、そのポイントを外すことで、教団を立ち上げていたのです…。

イラスト 小川けんいち

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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