日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#051
無量義経の段その十二
(三)

重陽の始まり

大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸輪之王。(無量義経徳行品第一)

東方の転輪聖王の証、法華経の要文「四海領掌の偈」をお釈迦様から面授口決(直接に口頭で教え伝えること)された周の穆王(ぼくおう)。

大事な教えを胸中に秘して誰にも洩らさなかった穆王でしたが、寵愛した美少年菊慈童(きくじどう)だけは特別。菊慈童が罪を負い流罪となった際、王は菊慈童に密かに要文を伝えるのでした…。

時は流れて千数百年後の三国時代。魏の文王の勅命を受け、霊水の水源を求めて険しき縣山の山中に踏み込んだ調査隊は、そこで自らを菊慈童と名乗る奇妙なる美少年と出会うのでした…。

九月九日は経の一字のまつり、戍を以て神とす。此の如く心得て、南無妙法蓮華経と唱へさせ給へ。現世安穏後生善処疑なかるべし

秋元殿御返事

なんだか「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」の十字軍兵士を彷彿させるお話ですが、この菊慈童が千年の時を超えて再登場した日は九月九日だったと伝えられています。

そう、実はこの伝説は五節句の一つの「重陽、菊の節句」の由来でもあるのです。

法華経の経文が書かれた菊の葉から流れた不老不死の水にあやかって、旧暦九月九日には菊の花びらを浮かべたお酒を飲み、長寿を祈るわけです。

もちろん重陽の由来はほかにも多々あるでしょうが、日蓮大聖人の弟子・檀那である私たちとしては、やはり法華経の利益譚(たん)たる菊慈童伝説をこそ採用したいですね。

はてさて、菊慈童こと彭祖から文帝に伝えられたという「四海領掌の偈」。代々の魏皇帝に伝承されたこの秘伝の教えは、やがて一人の高僧に受け継がれたと伝えられます。

その方こそは、あの天台大師の師、観音菩薩の再誕とも百家の祖師とも謳われた、南岳大師(なんがくだいし)であったのです。

イラスト 小川けんいち

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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