日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#055
千振せんぶりじいちゃん

霊断院弘宣局 教宣部長
宮崎県 龍雲寺聖徒団長
吉田憲由

我々の人生は、縁の連なりです。方便品第二には「仏種は縁に従って起こると知しめす」と説かれています。

時に辛い縁も、悲しい縁も、楽しい縁も、全ての縁は、仏に導くための「有り難い仏縁」なのであります。その時悟れる縁もあれば、「時薬」として時がたって気づけるご縁もあります。

その中でも苦い御縁はなかなか受け入れることができないものです。苦い御縁というと、私はいつもあの苦い苦い「千振のじいちゃん」を思い出します。私は「じいちゃん子」でじいちゃんの椅子の隣にはいつも蓋付き湯飲みに入った千振茶が置かれていました。

いたずらっ子だった私が何か悪さをする度に「こら憲由!なん悪さしよっとか!」と罰としてその千振茶を呑まされる。それが苦いのなんのってもんじゃない、妹を泣かした!障子に穴を空けた!掛け軸に落書きをした!とその度に、苦い苦い千振茶を呑まされていました。「また憲由は悪さをしてから~南無妙法蓮華経 三回唱えて千振り茶飲め!」と、しかられ、鼻を摘んできゅうーっと!正に苦い思い出でございます。

千振じいちゃん

じいちゃんの二十七回忌の法事があった時のこと。お膳をガツガツ食べる私を見て、九十五歳になるばあちゃんが「憲由あんた、お腹はなんともないね?」「ん!なんとも無いよ!なんでね!」「あんたは小さい頃はお腹が弱く弱くて、なんとかこの子のお腹が強くならんかねーと、じいちゃんが考えに考えて胃腸の薬である千振り茶を呑ませよったとよ!その食べっぷりを見て、じいちゃんが喜んじょるわ!」と・・・私が悪さをした罰だ罰だと思っていた千振茶は実は罰ではなかった・・・実は、私の体を気遣って飲ませてくれていた千振茶であったことを知り、涙が溢れて止まりませんでした。祖父の想い、優しさはもっともっと深く温かいものでありました。二十七年の時を超えて頂く「時薬」もあります。

是好良薬

御本仏様は『如来寿量品第十六』「是の好き良薬を 今留めて此におく 汝取って服すべし 差じと憂うることなかれ」と、お示し下さっております。末法に生きる我々を心配されて時薬として是好良薬の「お題目」を残してくださいました。しかし、その有難い良薬を自分で取って服すことが大切なことなのです。その為に我々は「俱生神月守」を着帯し「九識霊断法」の指導によってより深く信仰に入り、お題目の良薬を自らいただくのです。

どうか全国の聖徒の皆様、人生には、色々なことがありますが、ご本仏様はその人が乗り越えていけない試練は与えておりません。一人では乗り越えていけないからみんなで力を合わせて一緒に乗り越えていくのです。「良薬口に苦し」みんなでお題目を共に唱えて唱えて唱え続けて、令和の時代をみんなで生きて参りましょう。

※この記事は、教誌よろこび令和元年11月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

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