日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#054
功徳を積もう

島根県浜田市 龍泉寺聖徒団 団長
笹部一眞

~まず罪障消滅から~

お釈迦さまご在世のインドでのお話をご紹介します。

祇園精舎のあったコーサラ国の都に五百人の弟子を持ったバラモンの師匠がいました。その弟子にアヒンサカという聡明で屈強な好青年がいて修行に励んでいました。ある日、師匠の留守に、かねてよりアヒンサカに思いを寄せていた師匠の妻が浮気を迫ったのです。アヒンサカは驚いて、断ったのは当然です。しかし、大恥をかいた師匠の妻は自分で衣服を破り、帰宅した師匠にアヒンサカに襲われたと訴えたのです。激怒した師匠は、腕力では叶わぬと思い過酷な指導をしました。それは「今日一日で出会う者百人を殺し、その指を切り取って首飾りにするのだ。それでおまえの修行は完成する」というものでした。

祇園精舎

その日以来、彼は、町の隠れ家に潜んで人々を襲い、指を切り取って首飾りを作っていきました。その為、誰が言うとも無く「指の首飾り」という意味で「アングリマーラ」と呼ばれました。そして九十九本の指が繋がれ、最後の一人となった時、アヒンサカの帰りを待ちわびていた母親が現れました。急ぎ飛びかかろうとするアヒンサカの行く手をお釈迦さまが立ちはだかり、慈悲のこころで憐れみ教化され仏弟子としたのです。

祇園精舎で髪と髭を剃って出家し、殺人鬼アングリマーラから生まれ変わったアヒンサカは町に托鉢に出かけますが、彼に恨みのある人々は石や瓦を投げつけ、杖や刀で傷つけました。身体中が血に染まりかろうじて祇園精舎に帰り、お釈迦さまのみ足に額ずき喜びの思いを述べ、遂には悟りを開いたのです。

御題目信仰の相続

お釈迦様は弟子たちに請われアヒンサカの過去世のお話をします。

遠い昔、ある国の王に一人の太子がいた。女性にまったく興味を持たず三十歳が近づいても結婚しようとしないので、王は妖艶な女に太子を誘惑させた。するとそれから太子は色事にふけりはじめ、お城からおふれを出して国中の新妻の最初の夜を太子と共に過ごさせた。あまりの乱心に怒りを懐いた民衆は武器を手に国王に迫り「王の命か太子の命か」と迫った。仕方なく王により大衆に放り出された太子は、両手を縛られ城外で瓦や石で打ち殺された。太子は死を目前としたとき「この恨みはいつか晴らすであろう」と叫び、また「まことの人に会って悟りを得るであろう」と言った。この時の王とはバラモンの師匠であり、太子を惑わした女は師匠の妻、太子はアヒンサカ、そして太子を打ち殺した民衆は恐ろしいアングリマーラに殺された九十九人の人々である。

以上が祇園精舎のアングリマーラのお話です。私達は自分の過去世のことはわかりません。しかし、仏さまはすべてご存知です。毎月の盛運祈願会で懺悔文を読み、南無妙法蓮華経のお題目を唱え、家族で倶生神月守を戴きましょう。たとえ誰も見ていなくても、困っている人や悩んでいる人の為に親切な行いをしましょう。仏さまと倶生神さまが見てくれています。陰徳を積めばそれが善根となり功徳となります。功徳を積むことで信心が正しく定まり、一歩一歩仏さまに近づいて行くのです。

※この記事は、教誌よろこび令和元年10月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

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