日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#052
本当の幸福

島根県益田市妙法寺聖徒団団長
蔵本知宏

幸福とは

「人生には一つだけ疑いのない幸福があります。それは人の為に生きることです」(トルストイ)
「この世の最大の不幸は貧しさや病ではありません。誰からも自分は必要とされていないと感じることです」(マザーテレサ)

人の幸福って何でしょう。経済や環境、地位や名声では得られないのでしょうか。私たちの本当の幸福は何かを知るために、私たちが本来何者で何のためにこの世に生命をいただいたのかを、法華経と日蓮大聖人様から学んでいきましょう。

仏の子

法華経には、私たちは誰人も御本仏様の子供であり、しかも自ら願ってこの世に生まれて来たと説かれております。理由は衆生を憐れむが故にと。つまり苦しみ悩んでいる人を見かねて、仏様の遣いとして仏様の代わりにその人に手を差し伸べるためにです。それが私たちの役目であり目的なのです。本来の役目を果たしたときが本当の幸福なのです。

行うことの難しさ

中国の故事のお話です。ある有名な詩人が禅僧に尋ねます。

「仏法の大意とは何ぞや」
禅僧が答えます。
「ありとある悪を作さずありとある善きことは身をもって行いおのれの心を浄めんこれ諸仏のみ教えなり」と。
するとその詩人は、
「そんなことは三歳の童子でも知っています」「三歳の童子が知っていても、八十の老人すらこれを実行することは難しいぞ」

詩人は返答が出来なかったというお話です。知っているということと実行するということは違いますね。このお話は実行するということがいかに大切で難しいかということを私たちに教えてくれているのです。

常不軽菩薩
一代の肝心は法華経、法華経の修行の肝心は不軽品にて候なり。不軽菩薩の人を敬いしはいかなる事ぞ。教主釈尊の出世の本懐は人の振舞にて候けるぞ

日蓮大聖人

宗祖日蓮大聖人様は、行いでいちばん大切なのは常不軽菩薩の精神だと教えられます。常不軽菩薩は会う人すべてに合掌礼拝して、「私はあなたを敬います。決して軽んじません。それはあなたが菩薩行を行って仏様になる方だからです」

とおっしゃるのです。気味悪がられて、いくら怒られても罵られても決してやめませんでした。常不軽菩薩は、すべての人の心の中には仏様から頂戴した仏様になる種があることに気付いて欲しかったのです。その種とは仏性のことです。慈しみの心のことです。常不軽菩薩は、実はその仏性に手を合わせておられたのです。

菩薩行とは慈しみの心で行うすべてのことです。この菩薩行を行うことが仏になるための、幸福になるための条件なのです。常不軽菩薩の礼拝行とは、どうぞそのことに気付いて下さい、行いを示して仏になって下さい、幸福になって下さいとの祈りに他ならないのです。

本当の幸福

私たちが仏様の子供として、仏様の遣いとして、慈しみの心・奉仕の心をもって誰かの役に立つことが、取りも直さず御本仏お釈迦様の本来の願いであり、宗祖大聖人様の願いでもあるのです。そしてそれこそが真の幸福への道なのです。さあ今からでも遅くはありません。実行あるのみ!

※釈尊出世の本懐は人の振舞にて候いけるぞ

※この記事は、教誌よろこび令和元年7月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

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