日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#019
お題目で心を磨きましょう

日蓮宗霊断師会 聖徒部 事業課長
栃木県塩谷郡高根沢町 妙福寺聖徒団長
大森 映孝

お題目で心を磨きましょう
衆生の心けがるれば土もけがれ、心清ければ土も清しとて浄土と云ひ穢土と云も土に二の隔てなし只我等が心の善悪によると見えたり、衆生と云ふも佛と云ふも亦此の如し

「一生成佛抄」

この御文章は日蓮大聖人三十四歳の時、大檀越富木常忍(ときじょうにん)に宛てたお手紙で、信行会等で良く拝読される御遺文の一節です。

一九九〇年後半、身延山第九一世藤井日光猊下は二十一世紀は心の時代と述べておられました。確かに今の世相を見渡してみますと、日々様々な事件が報道され、利己的な思い込みや感情で事件が起きているように感じます。私たちの心のベクトルが、悪に向きやすくなっているのかもしれません。心のベクトルが悪に向きやすいという事は、先に挙げた大聖人の御遺文によると、この世の中も悪い方に向かいやすいという事になります。

誰でも幸せで安楽な生活をしたいと望んでいるのに、これでは幸せで安楽な世界にはなり得ません。仏教の開祖であるお釈迦様は、人々の苦しみ悩みを無くし、安住するための真理を悟り、人々にその真理を悟らせるために様々な法を説かれました。単に仏教というと仏様の教えと捉えてしまいがちですが、我々衆生が佛と成るための教えを説かれたのです。

しかし、お釈迦様が悟られた真理は、法華経にも説かれているように難信難解(なんしんなんげ)で、そのまま言葉にしても伝える事が出来ないため、その人に合った導き方をされたのです。例えばリンゴを見た事も聞いた事もない人に、言葉だけで説明しようとしても正しくは伝わりません。それはその人が今までの経験の中から話の中のリンゴを想像し、作り上げるからです。

お題目で心を磨きましょう

皆様も経験があると思いますが、初対面の人の第一印象と、二度目に会った時の印象が違ったり、どこのお店のこのメニューが見た目が綺麗でおいしかったと聞いて、実際にお店に行って食べた感想が教えてくれた人と全く違っていたなど。これは聞いた事を自身の経験に基づいて想像し、自分勝手に作り上げた印象が実際のものと違っていたために起こるものです。

仏教には正見(しょうけん)という言葉があります。これは自分の想像や印象に惑わされずに見るということです。正しく見る事によって、正しい思惟、正しい行いが生まれます。

この正見を邪魔する想像力や自分勝手な思い込み(想像力・形成力)のことを、サンスクリット語ではサンスカーラと云います。このサンスカーラ(想像力・形成力)は人によって様々で、そのときの立場や心の持ちようによって違います。この想像力・形成力が一定で無い事を「諸行無常(しょぎょうむじょう)」というのです。当たり前ですよね。もし百人が百人同じ想像力・形成力であったら逆に恐ろしくなってしまいます。故に多くの経典があるのです。

仏教の目的は成仏することです。様々な経典がありますが、全て我々衆生を成仏させるための手段(方便)です。そして法華経は佛様の悟りそのものです。

日蓮大聖人は成仏への道は法華経・お題目を信唱受持することであると教えて下さっています。お題目を信唱受持し、善の心を持ち物事に当たれば、この世は浄土になるのです。「浄土と云ひ穢土と云も土に二の隔てなし只我等が心の善悪によると見えたり」です。

倶生神月守を着帯する私たち一人一人が強盛(ごうじょう)の信力を持ち、一丸となってたゆむ事なくお題目の信仰に邁進致しましょう。

イラスト 小川けんいち

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