日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#017
みんなの幸せを願い、
信仰生活をしてまいりましょう!

日蓮宗霊断師会 総務部 部員
静岡県伊東市
朝善寺聖徒団団長
工藤 堯顯

みんなの幸せを願い、信仰生活をしてまいりましょう!

「蜘蛛の糸」(芥川龍之介)というお話があります。

ある時、お釈迦様は蓮の池を散歩中に池の中を覗き込みました。すると、その池は針の山や炎が蔓延している地獄界につながっていて、地獄の有様を悉く見る事が出来たのです。

その中に罪人と一緒に苦しんでいるカンダタという男がいました。その男も他の罪人と同様、盗みや殺しなどの大罪を背負い地獄に落とされた訳ですが、そんな罪人でも一度小さな蜘蛛を助けた事があり、その善行を知っていたお釈迦様は、地獄から救うチャンスを与えようとし、池の畔に居た蜘蛛の光輝く糸を地獄界のカンダタの目の前に垂らしたのです。カンダタはその光る糸を見て、これは苦しい地獄から抜け出す糸だと思い、必死で両手で掴み上へ上へと登り出しました。登るにつれだんだんと地獄界が遠くなり、疲れたので一休みし、地獄界を見下ろしたところ、無数の蟻のように罪人達が蜘蛛の糸を掴み這い上がってきたのです。カンダタは、糸が切れてしまうと大変だと這い上る罪人に向かって「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は俺のものだ、降りろ」と言ったところ、今まで何ともなかった糸がプツリと切れて、罪人共々カンダタも奈落の底へ堕ち、地獄界へ戻ってしまったというストーリーです。

このお話には、お釈迦様、ご本仏様の云わんとする教えが隠されているのではないでしょうか?

お釈迦様が真実の法であると明かされた、我々が信ずるところの法華経には、今実際に目の前に生じている現実世界(娑婆)は、仏の御心から見ると、悪鬼充満する燃え盛る地獄であると説かれています。しかし、ご本仏様の大慈悲心により様々な手段を使い、その地獄から救いだそうとしているのです。そして、地獄で苦しむ全ての衆生(人間だけではなく、生きとし生ける全ての生命体)を救おうとされている教えが妙法蓮華経なのです。そこに帰依する事が『南無妙法蓮華経』でありす。「蜘蛛の糸」で云うところの糸が妙法蓮華経であり、糸に掴む事が『南無妙法蓮華経』なのです。しかし、お題目と巡り合っても自己中心的であると糸が切れてしまいます。全ての衆生を救いたいと願うご本仏様の御心に少しでも近づきお題目を信仰した時、真実の救いが生じてくるのです。

みんなの幸せを願い、信仰生活をしてまいりましょう!

私は、日蓮宗の僧侶となり霊断師になり八年目を迎えますが、その中で出会った聖徒さんの一人で、とある会社を経営している方がいます。その方が経営する会社は祖父が裸一貫で立ち上げた会社で、祖父、父と二代必死に経営をし、平成の大不況にも負けず礎を築いた会社でした。それが、その聖徒さんの代になり大きく経営方針を変え、業績が悪化し借金も膨れ上がり、どうすれば良いかと悩んでいる時に縁有って相談に来られました。しかし、その聖徒さんからは、礎を築いた方々への感謝や従業員への感謝や現場への情熱はそれ程感じる事が出来ませんでした。霊断法によるとその通りのお示しがあり、様々な改善点をお伝えしました。まず会社を築いた方々への感謝、従業員への感謝、なによりも仕事を通じて多くの方に笑顔になって頂き、少しでも世の中の為になる仕事をするんだという情熱を持って倶生神月守を着帯すること。また今まで会社を築くにあたって様々な方の力が有り、その中には故人の方もいますから、会社で有縁無縁の霊のお題目供養もされた方が良いですよと伝えました。しかし納得はされず、「お経とご祈祷でなんとかしてくれると思うから来てんだ。」といって帰られました。それから数日後連絡があり「夢の中で、祖父と父が頂上に座っている大きな砂山を、他の者を退けてわれ先にと凄まじい形相で掘っている自分の姿を見ました。先日言われた事がどういう事なのかわかりました。これからは、周りの幸せを願い仕事をしていきます。」という内容でした。それからは、倶生神月守をしっかり着帯するようになり、仕事も誰よりも早く行き、周囲の方々にありがとうを伝える事を心掛け、仕事の合間を見つけお参りに来ては、お題目を唱え、ご祈祷を受け、供養を重ねました。今では、徐々に借金も減り、張りのある生活になってきた様子です。

我々の目の前にも必ずご本仏様からの糸が垂れ下がっています。もうすでに掴んでいるかもしれません。しかし切れそうになっていないか倶生神月守に手をあててお題目を唱え、信仰生活の軌道をしっかりとその都度修正し、多くの方々の幸せを願い生活して頂きたいと思います。

そうする事により必ずや安らかなる生活が訪れる事でしょう。

イラスト 小川けんいち

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