日蓮宗霊断師会 教宣部 部員
和歌山県和歌山市安楽寺聖徒団団長
吉野 俊幸
今、自分が置かれている環境・状況に不満を言い、自分の不遇は周りの責任だと愚痴を言いたくなる時があります。周りのせいで私は不遇なのだと。あいつの指示に従ってこんなことに、あいつさえいなければこんな苦労は無かったのに・・。このような感情は大小の差はあれど、誰にでも経験があると思います。
心地観経に曰く「過去の因を知らんと欲せば其の現在の果を見よ。未来の果を知らんと欲せば其の現在の因を見よ」等云云
[開目抄(かいもくしょう)]
当たり前のことですが、過去は変えられません。今ある現状を、ただ静かに受け入れることが必要かもしれません。忘れないでいてほしいことは、今のこの現状も、そのまま未来の原因になるということです。私たちは過去を原因とする結果の中で生きながら、未来の原因を生きているのです。
今ある現状を受け入れ、三毒を止め、未来に向かって善なる原因を作りながら生きていきたいものです。
衆生の心けがるれば土もけがれ 心清ければ土も清しとて 浄土と云い穢土と云うも土に二つの隔てなし 只我等が心の善悪によると見えたり。
[一生成仏鈔(いっしょうじょうぶつしょう)]
当山では「お寺de縁結び」というイベントを行っています。現代風に言い換えると、「抹香臭いお見合いフェス」。
始めたきっかけは、当山で行っている寺子屋活動の中にありました。子どもと接していると、その姿・言動から家庭が見えます。寺子屋活動は、子どもの心の成長の為に始めた活動でしたが、続けているうちに、子どもたちの生活基盤である家庭に対して何かアプローチ出来ないかと考えるようになりました。仲間と共にこのことを考え、いっそのこと家庭を作るスタート段階でのお手伝いをしようという発想になり、お見合いフェスが始まりました。
開催テーマは「仏と仏が出会った 二人の作る世界は浄土である」とし、お互いが仏さまであるというところから始まります。
過去に十二回開催し成婚は二組で、その内一組は子どもを授かり、忙しくも幸せな毎日を過ごされています。また、現在交際中のカップルは四組程を把握しています。
当山としては、お互いを尊敬し、慈悲の心で溢れた家庭という小さな浄土を築き上げてほしいと願い、活動を続けております。
私たちの心が三毒という悪なる心に侵されると、その世界は穢土(えど)となります。
私たちの心が仏さまの善なる心に通じると、その世界は浄土となります。
浄土は他所に求めるのではなく、ここにあります。この世界にだけ、浄土=仏様の世界を顕現することができるのです。
日蓮大聖人は、穢土に住み苦しみの多い私たちの為にお題目を弘められました。私たちの心が、仏さまの善なる心に通じてほしいと願ったからです。
不遇に嘆き、自分の心の奥にある仏さまに通じる道を、ふさいではなりません。
不遇に嘆き、自ら願っていただいた今のいのちを、無駄にしてはなりません。
苦しい時こそのお題目です。倶生神月守を着帯しお題目を唱えることで、仏さまに護られ、仏さまの道へと進むことができます。
そうすれば、私たちの未来は、仏の世界の住人となることでしょう。
イラスト 小川けんいち