日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#054
無量義経の段その十四
(一)

消された佛教

大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸轉輪王。(無量義経徳行品第一)

転輪聖王への遇し方を以て、佛様に遇すべし。

印度において佛法に取り入れられた王者の秘儀は、天台の教えの中で、再び王者への秘儀へと再転換されたと伝えられます。

その秘儀とは即位灌頂式。

法華経の八つの句からなる、四海領掌の偈、

「十方佛土中・唯有一乗法」・・・・・・・・・・・・(方便品第二)
「観一切法・空如実相」・・・・・・・・・・・・・・(安楽行品第十四)
「佛語実不虚・如医善方便」・・・・・・・・・・・・(如来寿量品第十六)
「慈眼視衆生・福聚海無量」・・・・・・・・・・・・(観世音菩薩普門品第二十五)

をベースとして成立したといいます。

この秘儀によって即位した王は、その権威を佛法、しかも法華経によって保障され、その権力は転輪聖王にも等しい、王の中の王となったといいます。この大いなる秘儀は、やがて真に必要とされるべき処、そう日本は皇室へと伝えられたというのです…。

夫れ此の国は神国なり。神は非礼を禀けたまはず。天神七代、地神五代の神神其の外諸天善神等は一乗擁護の神明なり。然も法華経を以て食と為し、正直を以て力となす

与北条時宗書
消された佛教

三十五歳以上の方なら憶えておられることでしょう、平成二年一月二十三日から、ほぼ一年にわたり執り行われた、今上天皇陛下の即位に関する様々なる行事のことを。

その様子を伝えるテレビ・ラジオ(まだまだインターネットの時代ではなかったんですね)は、皆口を揃えていったものです。「古より伝えられてきた皇室の儀式です」云々と…。

で、恐らくは当時の視聴者の大半(そして多分伝えている側の放送局の人たちも)は、それこそ平安時代、あるいは奈良時代、はたまた飛鳥時代等々と、各々のイメージする処の古代の世から、これらの儀式は綿々として伝えられてきたんだろうな~、いや~伝統ですね~等と思っちゃたことでしょう。

ところがギッチョン、事実はさにあらず。いかに伝統、伝統とテレビやラジオが連呼すれども、それはせいぜい明治以降のこと。皇室の長き時代にあっては、つい最近の傾向とでもいうべきもの。

そこには本来あったはずの佛教の部分が完全にデリートされていたのです…。

イラスト 小川けんいち

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

pagetop

TOP